寄り付き前に発表されたCPI。その結果を受け大幅に下落するNY指数先物。しかしながら直近のコモディティー価格の値下がりなどから、今がインフレのピークであり、これ以上悪い数字は出ないという思惑から、材料出尽くしで寄り付き後は株価は上昇してまいりました。
一時期は1バレル120ドルを超えていた原油も今は100ドルを下回り、ガソリン価格も高値圏で推移しているものの、以前の様な上昇は無く安定してきました。しかしながら背景には未曾有のドル高がコモディティー価格の上昇を抑え、インフレが和らいでいるという側面もございます。言い方を変えればもし今の状態でドル安に傾くならインフレ率はさらに悪化する。
皆さんもご存知の通り、コモディティーとドルは天秤の右と左だ。ドルの価値が上がればコモディティーの価値は相対的に下がり、逆にドルの価値が下がればコモディティーの価値は相対的に上がる。
コロナショック後の大規模金融緩和で紙幣の価値が希釈化する中で大幅に値を上げたコモディティー。しかしながら直近のFedによる引き締めで、ようやくドルの紙くず化に歯止めが掛かった形だ。もちろん米国経済は常に財政赤字と経常収支が赤字であり、ドルは紙くず化しているが、それでも緩和時代ほどのハイペースとはならず。
今回のCPIを受け、一時的に大幅に下落したあと反発した株式市場。インフレはピークアウトするかも知れないが、それが良いか悪いかと言えば良い訳が無い。そしてこれ以上は悪くはならないとして、インフレのピークアウトを見越して反発する株式市場だが、反発は短命に終わる公算だ。
ドル高はコモディティー価格の抑制、引いてはインフレを軽減させるが、米国経済にとっては足かせでしか無い。特に行き過ぎたドル高は。ドル高で海外からの収益は当然急減。それがGDPの成長率を押し下げるが、このドル高により押し下げられた名目GDPに、さらに直近の9,1%のインフレを加味すると実質GDPは悲惨だ。
現状のドル高ですでに第一四半期はマイナス成長だった米国のGDP。しかしながら今回の最悪なインフレ率とさらなるドル高で、マイナス成長はさらに深堀する可能性が高い。なんせ9%成長してもインフレの9,1%を差し引けば、実質GDPはマイナス成長だ。まあ10%成長すれば良いだけだが。。んな訳ない。。。
そして今の米国経済の置かれている状況は、進むも地獄、戻るも地獄、どこに進むも通ずる道は地獄のみだ。ドル高がインフレやコモディティー価格の上昇を抑制しているが、この状態では経済がズタボロに。逆にドル安に傾けばインフレやコモディティー価格はすぐに上昇し、インフレによりGDP及び経済はズタボロに。
進んでも戻っても、現状維持でも行き着く先は地獄だけだ。ドルがどう動こうが、マイナス面ばかりが強調される経済情勢だ。もちろん解決策はある。劇薬だが特効薬だ。それは失業率の上昇による実需の喪失。誰も消費出来なければ、需要の失くしたコモディティーは価格を下げざる負えない。全ての物の価格は需要供給曲線で決定されるのだから当然だ。
現在の失業率は、直近の雇用統計からも分かる通り底堅い。当然それではインフレは収まらない。現状のままならインフレ率はピークアウトするかもしれないが、需要が蒸発しない限りインフレは高止まりする。また為替が少しでもドル安に傾けばインフレは再び上昇する。Fedはまったく持って手を抜くこと無く、引き締めを行わなければならない状態だ。
Fedに残された唯一の道は引き締め街道を爆進するのみだ。上述の通り為替がどう動こうがもはや米国経済にはマイナスであり、残された選択肢は、失業率を上昇させることでしかインフレを解決出来ないのだから。失業率を上昇させるのも簡単だ。企業の利益なんか吹っ飛ぶくらいのドル高と、資金の借り入れコストを上昇させればよいだけなのだから。。。
日本では円安で好景気に湧く輸出産業。しかしその裏では燃料価格が上昇してインフレに喘ぐ国民の姿も。なんのことはない。為替の利益と損失は裏表一体で、輸出産業の好景気とインフレに喘ぐ国民はコインの裏と表で一体だ。。また今の輸出産業の好業績は次に来る円高でチャラになる公算だ。大不況と共に。。。
はっきり言って日銀の金融政策は失敗だろう。国民が物を買えなくなるほどの円安を招いたのだから。円安による輸入資源の大幅な上昇で貿易収支が大幅に悪化するなら、輸出産業がいくら好業績でも弊害の方が大きい。なんせ輸出産業が好業績にも関わらず、それが貿易収支にまったく寄与していないのだから。
貿易収支の赤字幅を最小限に抑える円の水準は、やはり1ドル115円前後だろうか。今の水準は国民に貧しいと感じさせるには十分だし、貿易収支の大幅な赤字は、国民に危機感を抱かせ活動を萎縮させるには十分だ。緩和すれば景気が上がるというが、当然適正な水準がある。今の緩和は行きすぎだ。
そもそもこれ以上円安に傾いても、輸出製品の製造個数には寄与しない。車の生産台数は頭打ちだ。後は帳簿上で為替による損益の変動だけだ。もちろん製造台数が増えないのならば国内で新たな雇用は生まれない。雇用が生まれない金融緩和は、円安による資源価格高騰の弊害の方が大きい。
アメリカがクシャミをすれば、日本や欧州は肺炎になり、新興国は危篤状態に陥る。今でこそスリランカやエルサルバドル程度しかニュースになっていないが、アジア南米通貨危機が起こり、アラブ世界では政情不安やテロが増大。そしてアフリカでは食糧危機が起こり飢饉で何100万人もが難民となり、中国では2億人が失業する。
アメリカもそろそろ鼻にコヨリを突っ込む時間帯だ。まだクシャミをするまで時間はあるが。連鎖的なレイオフが起これば、それは終わりの始まりだ。皆がレイオフに怯え出来るだけ蓄えようとし、それが消費の低迷に拍車を掛ける。アメリカに物を売りさえすれば経済が回っていた日本やヨーロッパは、アメリカ人の消費低迷の煽りを真っ先に受ける。
インフレ率がピークアウトするのではないかという思惑から反発している株式市場。直近のコモディティーや原油価格の下落がそれを裏付ける。しかしながら最終的にコモディティー価格や原油価格に影響を及ぼすのは投機資金ではなく実需だ。実需が無くならない限り、本当のコモディティーや原油価格の下落、引いてはインフレ率の低下は起きない。アーストラビスタ、ベイビー。。。
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