2022/05/22

【レバナス】21年物が報われるのは50年後か?







2020年のコロナショック以降の金融緩和で、とりわけ大きく値上がりした資産であるブル三倍ETF。その大きな爆発力が人気を呼び、上昇相場の最後を飾ったのがレバナスと呼ばれるナスダック100の三倍ETFだ。そう、直近の上昇を見せつけられ、これなら簡単にお金が増えるんじゃないか?と考えた、いつの時代にもババを引く残念な人たちが大挙として押し寄せた。算数すら出来ないのにどうやって小学校を卒業出来たんだ?





しかし当然ながらバブルは永遠に続かない。あんたらがババを引いたところがバブルの終わりだ。巷では、今後アメリカは70年代型のインフレ不況に入り、そして世界第二位の経済大国である中国は、日本の90年代型の不況に入るのではないかと囁かれている。




レバナスと並び人気を博したCWEB、中国インターネットETFブル三倍は、仮に中国が今後90年台の日本型不況に突入する場合、21年物CWEBが報われるのに1世紀くらい掛かりそう。因みに日本は、日経40000が底の7000を付けるのに10年以上掛かり値札は高値から5分の1以下。そしてあれから30年、現在でもその値を奪還出来ていない。








1989年に、仮に日経ブル三倍のETFを100万円分買っていた場合、今の価格は1000円にも満たないのではないか?日経が現在26000と当時の高値から30%ほど安く推移しているのだから三倍なら悲惨な事になるのは当然だ。元の資産がそもそも値を戻しておらず、長い年月を経て進む減価には強烈な複利が働く。そして当時の高い金利から考えれば、この日経ブル三倍ETFの信託手数料も高かった事だろうが、この高い信託手数料にも長い年月による強烈な複利の力が働く。





バブル崩壊前夜に買ったこの日経ブル三倍が報われる日が来るのかと問われれば、私は永遠にないと答えるだろう。当時100万円で買った日経ブル三倍の価格が現在1000円とするなら、値を戻すには1000倍にしなければならない。当然年月と共に減価が進むため、元資産が333倍になってもあなたの日経ブル三倍は1000倍にはならない。元資産である日経は500倍にはならないとだめだろう。日経平均が2万6000なら、そこから500倍の日経平均1300万だ。





中国インターネットブル三倍のCWEBも同様の末路となるだろう。中国も不良債権を消化するのにそのくらいの時間は掛かりそう。当然高値から半値ほどで推移している元資産に対してその三倍の値動きのブル三倍の末路は悲惨だ。上述の通りだ。今後不良債権問題が浮上し、不動産での損失を補填するため株式は常に下落リスクに晒され、低迷する景気がそれに拍車を掛ける。









では翻って、レバナスの方はどうなるのだろうか?算数が出来ない皆さんには、まず減価から説明する必要があるだろう。例えば元資産であるQQQとその三倍ETFのTQQQを100万円分ずつ買った場合を想定しよう。QQQが下落し10%安の90万円になりその後10%上昇し99万円。下落率と上昇率は同じ10%なのに、資産は100万から99万と価値が減っている。これが減価だ。



そこにレバレッジがかかると減価の作用は強烈になる。TQQQの下落率は3倍の30%で70万となり、その後の上昇も三倍の30%だが、資産は91万になってしまう。QQQはほぼ値を戻しているのに対して、TQQQは10%ほどの割引だ。そしてその年月が長ければ長いほど、小さい山や谷を刻めば刻むほど減価の作用は大きくなる。




これだけでも三倍ETFの怖さが分かっていただけただろう。算数が出来ない皆さんは、なぜ海千山千の凄腕投資家たちがこのレバナスやTECLを触らないか、その理由を考えた方が良い。例えナス100指数がその値を戻したとしても、あなたの保有するブル三倍ETFは当然値を戻さない。そして運悪くバブル崩壊前夜のババでも引こうものなら、上述の日経ブル三倍やCWEBコースに突入で、一発退場になってしまうからだ。







さて、現在のQQQは高値から30%安で推移している。ではその三倍のTQQQは90%安になると思ったあなたは、やはり算数が出来ないのだろう。先程私は、QQQが10%安になると、その三倍のTQQQは30%安になると言ったが当然ながらあれは嘘だ。もしそれが一日の値動きの結果なら当然そうなるが、日々の値動きの積み重ねによる結果なら、そこには逆複利の力が働く。



やはり算数が出来ない諸君には逆複利を説明する必要があるだろう。あなたは100万円分のQQQとTQQQを購入しました。初日にQQQが10%安の90万円になり、次の日11%安で80万円になったとしよう。あなたのQQQは100万円から80万円となりトータルで20%安だ。




ではその間のブル三倍TQQQについて考えてみよう。初日は30%安の70万円となり、次の日は33%安、つまりそこから3分の2の46万6000円となる。つまり元の100万円から53,4%安の46万6000円だ。元資産であるQQQが高値から20%の割引となっているが、TQQQはその三倍の60%安とはならずに、53%安で済んでいるのは逆複利の作用が働いたからだ。







これは同じ割合でも金額が少なくなれば、絶対値が小さくなるからだ。100万円の10%は10万円でも80万円の10%は8万円だ。三倍ETFの推移を考える上で、減価と逆複利の概念は重要だ。そして現在QQQは高値から30%安で推移しているが、TQQQは高値から90%安とはならずに、逆複利がの作用が働き70%安となっている。



つまりもし高値でQQQとTQQQに100万円ずつ投資していた場合、QQQは70万円でTQQQは30万円だ。そして当然ながらQQQが値を戻したとしても、TQQQは減価しているので値は戻さない。QQQが43%上昇して再び100万円になっても、TQQQは日々の減価により2,29倍にはならずに2倍程度となり、60万円ほどとなってしまう。まあ一日で43%上昇すれば当然その三倍の2,29倍になるのだが。。。




さて、ここからが本題でなぜ21年に買ったレバナスが報われるのに半世紀も掛かってしまうのか?その前に普通の投資家なら即答出来る簡単な問題に挑戦してもらおう。
1、元資産であるナス100の一日の値動きが33%安だった場合のTQQQの値動きは?
2、QQQとTQQQを100万円づつ買いました。次の日にQQQは40%の暴落。TQQQのお値段は?








最近、算数すら出来ない投資家達がレバナスを買い続ける心の支えとして、過去のバックテスト、つまり直近のゼロ金利、量的緩和、財政出動の緩和バブル時代の最高値を付けた時の結果を持ち出しているが、当然都合のいい場面を切り取ったバックテストは参考にならないどころが、害悪でしかない。時代背景に沿ったバックテストを行わなければならない。




今後のアメリカは70年代型のインフレ不況、スタグフレーションになるのではないかと言われている。その当時のダウの値動きがコチラだ。







時代背景を説明すると、65年からベトナム戦争に介入したアメリカは財政出動が大きくなり、当初こそ財政出動の戦争特需で株式市場は活況を呈したが、大きすぎる財政出動により後にインフレが深刻化。多くの若者が徴兵され、また軍需産業に労働力が割かれ労働力は不足。インフレによるコストアップと労働力不足による賃金アップで企業の業績は大幅に悪化。これらの複合的な要因により株価や景気の低迷とインフレの深刻化が増しスタグフレーションが長期化することに。




ここで残念な投資家に登場してもらおう。この残念な投資家は、戦後のベビーブームから続く好景気を眺め、直近の戦争参入で財政出動が大きく拡大したため今回の株高は非常に長く続くと考え、65年末にレバダウを買った。三倍になるまでガチホだとか言いながら。チャート上では天井だ。因みに当時はレバレッジETFは無い。指数ETFも当然無く、なんならナスダックすら無い。ナスダックは1971年からだ。




ガチホだと鼻息荒くしてレバレッジETFに参入したこの残念な投資家は、50年以上経過した2022年現在、無事に資産が三倍になり資産を売却出来たのか検証していこう。まあ例え資産が三倍になったとしても、その間に物価は10倍くらいなっており、月給が500ドルから5000ドルほどとなっているようなので残念な投資家は損をしているのだが。。。









因みにこの検証はレバレッジ投資家にとって都合の悪いところを意図的に切り取った検証ではなく、どちらかと言えば楽観的シナリオだ。悲観的シナリオは上述の90年代日本のバブル崩壊シナリオだ。



65年以降のダウはチャート上からも分かる通り横ばいだ。その間1000ドルを高値、700ドル付近を安値のトレンドラインを形成し、5回の下げ相場が確認出来る。もしこのダウをレバレッジ3倍型のレバダウを1万ドル買った場合を考えてみよう。




残念な投資家が買ったのは65年のダウ指数1000ドルのど天井だ。因みに2022年現在は31000なので31倍だ。元資産が31倍になったのだから(配当再投資の複利運用の場合は当然これ以上)、そのレバレッジ型を購入したこの残念な投資家はさぞかし成功しただろうと思われがちだが、それはダウを買った場合で、レバダウは当然90倍にはならない。








以下に当時の値動きに合わせたダウとレバダウの1万ドル買った場合の資産推移を載せておく。当時の5回の下げ相場でどれほどレバダウが減価するのか見てみよう。細かい計算は省いて、ダウが1000と700ドルを5回往復したとする。


そして上述で説明したとおり減価や逆複利を反映させた結果。つまりレバレッジが3倍でも逆複利が働きダウが30%安でもレバダウは90%安とはならずに70%安となる。上昇の場面では減価が働くのでダウ指数の方は1000ドルまで戻すが、レバダウは元の水準まで戻らず。。








上記の表の用に、ダウの方はほぼ買値で推移しているのに対して、レバダウはレバレッジによる激しい減価で資産は3,8%になっている。1万ドルが388ドルに。この388ドルを1万ドルまで回復させるには25倍にする必要がある。そして残念な投資家の目標は投資額の3倍である3万ドルまでガチホだ。。つまり75倍だ。。。





あれから半世紀、50年の歳月が過ぎた2015年のダウは1万7000だ。残念な投資家が投資した時のダウ指数は1000ドルから17倍の1万7000に。しかし当然レバダウは減価するのでその3倍とはならない。50年間の長い時間では減価は激しく、その間の小さな山や谷がそれに拍車を掛ける。




さて残念な投資家の資産推移を見てみよう。チャート上の最後の底を付けた1983年、ダウ指数は700ドルで投資家の資金は当初の1万ドルから388ドルになってしまった。そして投資を始めてから50年後の2015年、ダウ指数は1万7000で25倍ほどだ。三倍の値動きだが減価するので残念な投資家の資産は大底の388ドルから50倍ほどの1万9000ドルまで上昇。




レバレッジ3倍にも関わらず、ダウ指数が17倍にもなったのに残念な投資家の資産は2倍にもならずに。。。そして21年末、遂に。。。とその前に広告です。。








21年末遂にダウ指数は3万6000を達成。2015年から更に2倍ちょいほど上昇。もちろん2015年以降、チャイナショック、金利ショック、ブレグジット、トランプショック、18年クリスマスショック、コロナショックと大きく動く度に激しく減価し、ダウ指数が2015年から2倍になっても残念な投資家のレバ3倍ダウETFは4倍にしかならず。




残念な投資家が半世紀掛けて資産を1,9倍の1万9000ドルにし、そこから6年掛けてさらに4倍の7万6000ドルになりました。それでも57年前の当初の目標である3万ドルを大きく超過する結果に、この残念な投資家は1万ドルが7万6000ドルになったと大満足でガチホを継続。。。





そして22年5月末、昨年末からダウ指数は20%ほど下落し、レバダウは半額に。残念な投資家の資産は3万8000ドルに。因みにこの57年の歳月で月給は500ドルから5000ドルと物価は10倍に上昇。その後、22年以降のインフレ不景気の利上げ引き締めスタグフレーション相場で再度65年にタイムワープしましたとさ。めでたし、めでたし。






いったい今回は何度下がるんですかね?どこまで下がるんですかね?もうこの残念な投資家、片足を棺桶に突っ込んでるのに、70代型不況が来たら、指数ETFのレバレッジ型に投資しているのにもかかわらず、半世紀たっても生涯成績がマイナスのまま死んでしまう。。アーストラビスタ、ベイビー。。。


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