2019/06/02

再び日が昇る時



昨年末以来の下落トレンド。
前回と今回のトレンドに、何か違いはあるのか?
決定的な違いは、前回の下落は、FRBの利上げにより、
イールドスプレッドの逆転が猛烈に意識されこと。
当時は、経済は堅調で、企業業績も好調だった。
よって、下落トレンドが長く続き難い状況だったと言える。

しかし、今回の下落は違う。
今回も前回も米中貿易戦争の余波があるのは変わらないが、
決定的な違いは、下支えを失っていること。
堅調な経済や、好調な企業業績という下支えを失った株価を、
変わりに何が下支え出来るのか?

投資家の希望?不可能では無い。
しかし、希望を持てる時とは、経済が上昇トレンドの時。
希望が投機的な投資を呼び込み、時としてバブルを起こす。
しかし下落トレンドの時は、心理的に希望を持ちにくい。
バブル崩壊後、失われた30年を過ごしてきた、
日本人の消費者マインドが如実にそれを物語っている。
つまり、未来に対する希望では、株価を下支えするのは難しい。

では、何がこの大河の流れを止められるのだろうか?
これは簡単で、
1、金利の引き上げ、
2、量的縮小(QT=カンティタティブ タイトニング)、
3、関税の増額
これらが景気の流れを変えたのなら、この逆をすればいい。
即ち、金利を引き下げ、量的縮小を開始し、関税撤廃。





最近よく聞かれるのが、テンツーイールドスプレッドが、
逆転していないため、景気の後退は、
すぐには起こらないという謎理論。
金利の影響のみの考え方で、QTの影響が考慮されていない。
しかし、QTを考慮に入れれば実質的には、
すでにイールドスプレッドは逆転しており、
さらに、再逆転している可能性も。。。

量的緩和は、ベースマネーに影響を与える。
すなわち、中央銀行の口座残高を増やし、
そのお金を、市中の銀行にばら撒く。
ヘリコプター・ベンの異名を持つ、
ベン・バーナンキ氏が、この施策の支持者。
現状は逆で、市中の銀行から、お金を吸い取り、
中央銀行が焼却処分している。
つまり、中央銀行の口座残高は減少。
これで、世の中のお金が増えると思うのか?

金利の上昇は、マネーサプライに影響を与える。
中央銀行が印刷したお金は、市中の銀行によって激増する。
これは、信用創造と言われている。
銀行の自己資本が10%ということは、
自分の持っている9倍ものお金を印刷して、
個人や企業にばら撒いていると言える。
その対価として、銀行は自分のポケットに債権を保有する。
債権とは、お金を金利と共に、取り立てることが出来る権利。
銀行のポケットの中は、10%の現金と90%の債権と言える。
こうして、ベースマネーから何倍にも増えたお金が
マネーサプライと言われ、市中に出回るお金の総量。

しかし、もし企業や個人がお金を必要としていなければどうなるか?
もし、金利が高すぎて、誰もお金を借りずに、
すでに借りている人が、がんばってお金を返済したらどうなるのか?
銀行が保有する債権が、返済されたお金と対消滅を起こす。
つまり、銀行のポケットが急速に萎み、
世の中のお金の総量である、マネーサプライが急激に縮小する。
平易な言葉で言えば、世の中からお金が無くなることを意味する。
この状況で、世の中のお金が増え、株価が上がると思うのか?

量的緩和、量的縮小はベースマネーに影響を与え、
金利操作はマネーサプライに影響を与えると言える。
よく、金利の引き上げが止まったのだから、
FRBは緩和的と捉えられることがあるが、これは間違い。
これを好感して、上昇する株価も間違っていることになる。
金利は、高止まりしたままなのだから。
もちろん、効率的市場仮説など、嘘もいいとこ。



現状は、もちろん世の中のお金が減っている。
それも凄い速さで。高金利で誰もお金なんか借りたくない。
銀行は、高金利では、貸し倒れのリスクが
増えるため、貸し出したくない。
空模様が悪くなれば、傘は貸さないし、
すでに貸した傘は、回収にかかる。
傘を貸すのは天気の良い日と相場が決まっている。

政策が変わらないのなら、日が昇る訳がない。
逆に言えば、もし日が昇ることがあるのなら、
最低でも3つの条件の内、2つは必要。
1、量的緩和
2、金利の引き下げ
3、関税の引き下げ

今後起きる可能性が高いこととして予想されるのは、
中途半端は金利の引き下げと、関税の引き下げ。
財やサービスに支払うお金が低下すれば、
消費者は安く物品を買うことが出来、消費意欲を刺激する。
しかし、こうした半端な政策で起こされる、
マインドの改善は、偽りの日の出となりそう。
インパクトとしては小さく、持続性に疑問符も。

我々のベテルギウスが地平線から顔を出すには、
やはり、ゼロ金利、量的緩和、米中経常収支の均衡化が必要。
米中経常収支の均衡化は、アメリカ、中国双方に恩恵をもたらす。
双方で仕事を創出しあい、双方の得意分で効率的に生産された、
サービスや財を割安な価格で消費できることになる。
現状中国は、市場は開放せず、グーグルなどの
アメリカの企業を締め出している。
しかし中国はアメリカの市場で商品を販売している。
これでは、不公平だろう。
どう考えてもトランプ大統領が正しいと言わざる負えない。
まあひんしゅくを買いやすい、
見た目や言動があることは否定しないが。

今回は、長い戦いになりそう。
偽りの上昇を何度か見ることになりそう。
それこそ、FRBが少し金利をいじるごとに、
トランプ大統領がつぶやくごとに。
株価が上がって、トレンドが転換したのを確認してから、
買うのでは、騙されることになりそう。

トランプ氏はともかく、FRBは金利を操作する前に、
織り込ませる発言をする。
これを頼りに、初動で資金を入れていくか、
テクニカル的な下げ渋りやすいところで
資金を入れていくのが強そう。
そもそも、バブル的とは言いがたく、
山も谷も平坦なため、ドルコストアベレージの定期もあり。
ただし、現状は高いし、大河の流れは変わらない。

2 件のコメント:

  1. 先生!
    仰っておられる事は、概ね理解しました。

    質問が有ります。

    Q1.
     FRBの最大の目的は、
     インフレを抑制する事だと、理解しています。
     FRBは、トランプ大統領の指示に、
     素直に、従うのでしょうか?

    Q2・
     CIAは、トランプ大統領の意図に、
     明確に、反対すると思います。
     CIAの反撃に対して、トランプ大統領は、
     カウンターパワーを持っているのでしょうか?

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  2. 今回のパウエル氏の利下げ発言に反応した買い戻しは、少し前にあった米中合意しまっせで買い戻してた頃を思い出すのですが本当の事は、今月のFOMCまで分からないですよね。
    S&P500が2750$の節目を割りで相場を壊さない絶好のタイミングだったので悔しいです。
    G20で米中の何らかの合意で上がって10月のハードブレグジットで下値模索と思っていたのでこのタイミングでの上昇が続くのか?
    どう思われますか?

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