2019/08/29

God Save the Queen、英国に神のご加護を



君臨すれど統治せず。ジョンソン首相は、議会開会を宣言する女王演説を10月14日に設定し、エリザベス女王はこれを容認した。うだつの上がらない英国議会に対して、遂に英国女王が民意を反映させるために、議会に対し三行半を突きつけた形。そもそもメイ首相の辞任後、保守党党首選で党首となったジョンソン現首相に対して、組閣を命じたのは英国女王。


10月14日まで議会は休会し、その後3日で英国議会は議論を纏め、EUとの交渉に臨むことになるが、今まで2年掛かっても紛糾した議会が、3日で議論を纏めるには時間が足りない。離脱延長の議論すら纏まらないだろう。

一応、議会の承認なしにEUを離脱できないことにはなっているが、10月31日までの期限が延長されない限り、自動的に離脱になってしまう。もちろんジョンソン首相は、10月17─18日に開催のEU首脳会議において、離脱期限延長の交渉は行わない様子。





英国議会は、ジョンソン首相に不信任を突き付けることもできるし、それに対し首相は議会を解散できるだろうが、何をしようにも時間が足りず、リーダー不在で議会も無く、総選挙にでもなれば確実に時間切れのゲーム終了。

つまりEUに残された道は2つで、英国の要求を全部飲むか、従来の協定案にしがみ付き、そのまま10月31日を迎えるかである。EUは絶対に英国の要求を飲むようなことはせずに、今まで通りの平行線になりそう。延長されなければ時間切れで終了になり、11月1日から英国EU間の国境は閉ざされる。

英国は、ヨーロッパ域内の国境を国境検査なしで通行することを保障した、シェンゲン協定に加盟していないため、11月からヨーロッパ域内から英国に入るためには、域外から入国するのと同じプロセスを辿る。これはヨーロッパ側でも同じで、英国からヨーロッパに入るには、ヨーロッパ域外から入るのと同じ国境審査を受ける。また所持するパスポートによっては、入国を拒否される可能性や、ビザが必要になる可能性も。





貨物に対しても同様の措置が取られる。現状はEUと英国間の間で取引される貨物に関税は掛かっておらず、物の移動の自由が保障されているが、今後英国に入るヨーロッパからの貨物は、ヨーロッパ域外から来る貨物と同様の措置が取られることに。もちろんヨーロッパ側でも同様の事態になるが、英国はヨーロッパに対して輸入超過のため事態はより深刻で、英国の港では通関待ちの行列ができる可能性も。

ヨーロッパ側では港での混乱は限られたものになりそうだが、経済的なダメージは英国より深刻に。英国に商品を買ってもらっていたからこそ、経済が堅調に推移していたが、今後はフランスのシャンパンやチーズ、ドイツの車や機械類には関税が掛けられ、売れ行きが低迷すれば景気は落ちる。つまりヨーロッパ製の商品は物流コストが上がり、また域外からの取引と同じ競争に晒されることに。

もちろん今回の離脱が決定すれば、苦境に陥るEUとは対照的に、日本製の機械類やアメリカ製の農産品には有利に働く。今まではEUに対し不利な競争を強いられてきたが、今後は対等な立場で競争することになる。もちろんEUとしては、英国と再び通商を協議する必要に迫られる。現状は「負担はしないにも関わらず、経済的な利益を得るのは許し難い」とEUは主張し、通商問題の交渉を突っぱねているが、実際に離脱となれば交渉のテーブルに着かざるおえない。もしくは誰も得しない経済的苦境を甘んじて受けることに。





もしジョンソン氏が離脱を推し進めるなら、そろそろ税関や入国管理局、港湾、ユーロスターの到着ロビーなどでブレグジットに備えた準備を指示することになりそう。EU側は強固な姿勢で臨んでおり、ブレグジットに対する準備など何もしていないが、はたして大丈夫なのだろうか?英国向け貨物を輸出するためのガイドラインなどの策定といった話などは皆無。通関待ちの行列と出国待ちの行列で、EU側の港には貨物が積み上がり、農産品などは腐るに任せそう。

安部政権は、そろそろ祝電の準備と日英首脳会談を要請しておくべきだろう。順番待ちの行列が出来る前に、他の国に先行してイギリスと交渉し物事を優位に運ぶべきである。イギリスとしても精神的な下支えとなり、EU側との通商問題で交渉を優位に運べる。EU側はしばらく痩せ我慢をし強気な姿勢を崩さないだろうが、英国は足元を見られた交渉などするべきではない。





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