2019/08/27

JT、日本たばこ産業に漂う一抹の不安




JT、日足チャート

JTのBTI化が止まらない。もともと高配当だったことから、3000辺りを底と踏んで買い込んでいた投資家が1年ほど前から多かった様な。またこの次も同じことをして、2000辺りを底と踏んで買い込む投資家が多そう。3000から2000とかすでに30%の損失か。。勿論売られるのには、それ相応の理由がある。





JTなんて生活必需品の鉄壁で、馬鹿に課せられた税金から上がるキャッシュフローが多く、鉄板銘柄だと思っている人も多いかもしれない。もちろん国内タバコ事業は安定のジリ貧でそれを値上げで賄っているため鉄壁だが(?)、問題は海外事業。

矢継ぎ早に買収を繰り返し、膨れに膨れ上がったのれん代。帳簿上に現れないブランド価値や経済的な堀、グットウィルとも呼ばれるが、これは帳簿上の価格と、実際に取得した時の価格との差。実際に取得する時には、既存株主が納得するよう、時価よりも高い価格で購入するのが普通。
ドミニカ共和国、インドネシア、フィリピン、エチオピア、ロシアなどと買収を繰り返してきたが。。。

ちなみに日本企業が海外進出をする方法は2つある。一つは直接投資と言われ、海外で子会社を設立して、土地を取得し、生産設備を新設して生産する方法。もう一つは間接投資と言われ、すでにある会社の経営権、株式を一部、もしくは全部を取得、出資する方法。JTは間接投資で経営権の一部や全部を、既存株主が納得する形で、時価に対して色を付けた価格で買収した模様。

こうして膨れ上がったのれん代、「何も問題ないじゃん」と思われるかもしれないが、たしかに予想通りにキャッシュフローが上がれば問題ない。しかしもし予想通りの収益が上がらなかったら?構図は今アメリカに投資をしていて、為替が円高に傾いたため、円建て資産残高が目減りし、また株式から上がる配当もどんどん減っていく米国株投資家とまったく一緒。





JTの場合はさらにボラリティの高い新興国通貨、トルコリラやアフリカランド、アルゼンチンペソと同じような吹けば飛ぶような通貨である。もちろんFRBが利下げに傾き、円キャリートレードの巻き戻しが意識される、このリスクオフの局面では完全に逆風で、物凄い速さで資産残高が減っていき、キャッシュフローも減っていくことになる。新興国の成長が、この資金の流れを凌駕する訳がない。

どうなるかって?もちろん米国株投資家と同じ道を辿ることになる。円高になればなるほど資産残高とキャッシュフローが減り、個人投資家ならまた風向きが変わるのを待っていれば良いが、企業の場合は決算があるため、時価で評価し直す時が来る。つまり資産価値が減った分、減損処理という損失確定に迫られる。またタバコを吸う本数が変わらなくても、そこから上がる利益は、為替で増減するため、円高に傾けば減るので業績の見通しが変わり、利益が減れば、そこから上がる配当収入が減る可能性も。つまり減損、減配、マイナス成長の赤字と。最近、M&Aで買収したブランドの価値が下がり、減損を発表したKHCの悲惨な株価を目の当たりにした人も多いだろう。あれになる可能性も。。

もちろんこれは為替が円高に傾いた場合であって、新興国が発展により通貨高に傾けば、円安で米国株投資家の資産残高が膨れ上がるのと同じで、含み益が増えることを意味する。また未来のことは絶対に分からないし、為替が円高になるか、円安になるかは分からない。





しかし、FRB議長は今後さらに利下げすると申しているし、9月からは米中貿易戦争の激化が予想される。つまり世界経済の第三四半期GDPの行方は大変暗く、10月末頃に発表されるであろう米第三四半期GDPが悪いもとのなれば、リスクオフの円高になる可能性も。因みに米第二四半期GDP後は、リスクオフの円高傾向なのは記憶に新しいだろう。あれが何度も繰り返される可能性が。

円高になればさらに為替分、資産価格は下落し、さらにリスクオフで売られるために株安で資産は下落する。もちろんJTの保有する海外資産でも同じ。「安物買いの銭失い」とはよく言ったもので、5%の配当に釣られて、50%資産残高が目減りする可能性は個人投資家もJTも同じ。BTIもKHCも構図はまったく一緒と言える。

しかしながら本当に少しだがプラスな面も。それは現地子会社の借金を、ゼロ金利の円高を利用した高い円で肩代わりしてやれること。新興国なんて、大抵の場合インフレの高利回り。またどんな会社でも銀行と取引があり、資産と負債があるため、新興国の高い利払いを減らすことができれば、利益をかさ上げすることが出来る。つまり円キャリートレードの撒き戻しがさらに逆周りに。そう引いた波は再び返し、また円キャリートレードが始まることに。本来この時こそ、間接投資を増やす機会だったにも関わらず、JTの経営陣はいったい何を考えているのか?





「馬鹿でも経営できる企業に投資しなさい」とバフェットは言ったが、それに習えばJTは投資不適切と言えるか?ソフバンあたりも怖い怖い。触らぬ神に祟り無し。動くなら来年の決算で、時価を織り込んでからでも良いだろう。株式は本来上昇に賭け続けるのが、一番効率よく資産を増加させる方法だが、唯一注意が必要なのがFRBの利下げ局面。そう今なのである。もちろんあっしは今は動かないし、動けない。

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