2019/01/11

ブレグジットに思う、日本の取るべき道



そろそろ、またあの問題が再浮上しそう。
そうブレグジット。みんなが忘れたころにやって来る。
以前の記事も参照
混迷を極める英国、メイ首相、くびか?
ブレグジットの行方

もうね合意は無理やで。
欧州からは、見せしめ的な譲歩を要求され、
英議会は、屈辱的な要求を受け入れる気は毛頭なし。
なんとか合意に漕ぎ着けたいメイ政権、しかし譲歩のし過ぎで、
政権は風前のともし火、メイ首相降ろしも。
そもそもメイ氏が首相の座を降りても、問題が何一つ解決しないと。

ちなみにあっしはブレグジット賛成派。
今は欧州連合の黄昏と見る。
つまりこの経済実験、社会実験は、禁酒法、共産主義同様、
失敗に終わるのではないか?
ギリシャ危機、PIGSの高失業率と経済低迷、最近のフランスのデモ。
問題の根底は、勿論ここにある。

その裏では、輝けるちょび髭帝国、ドイツの経済的大成功がある。
政府の財政収支を黒字にまで漕ぎ着け、莫大な貿易黒字を計上。
つまり共通通貨ユーロは、苦難に陥った国々の利益を、
ドイツに献上する仕組みだと。

さらに問題を深めるのは、ドイツの歪な人口ピラミッド、
少子高齢化と人口減少は、安い労働力確保のため、
移民、難民に寛大な方向へと、欧州連合を通して舵を切り、
負担は加盟国の分担、特に中東に近い東欧、
アフリカに近い地中海沿岸国に押し付け、ドイツは負担を避ける。
しかし、東欧やPIGSに負担できる程の経済的余裕は無く、
経済政策でも移民政策でも犠牲者に。
フランスはアフリカに旧植民地を多く抱え、フランス語話者が多いため、
また英国は世界共通語である英語の国、言語の壁が比較的低いため、
移民、難民の最終目的地になってしまう。

(ここまで書くと、よほどドイツ嫌いなのではないかと思われるかもしれないが、
客観的事実を述べているだけやで。
逆に大戦中の同盟国、技術立国、貿易立国と日本との共通点が多く、
親しみを感じる、どちらかと言えば好きな国です。
で日本政府は、このドイツの様に上手く立ち回れるか?
と問われれば、まず無理でしょうな。)



日本政府が取るべき行動は、
他人事で自分には関係ないという態度を改めるべきだろう。
たしかに欧州連合の問題であって、地理的、経済的、政治的には、
あまり関係ないかもしれない。
また苦難に陥るかつてのの大英帝国を見て、次は我が身と考える向きも無し。
今ここで英国に危機が訪れても、英国の問題と片付けるだろう。
しかし、もしここで英国と協力関係を結ぶことで、
英国を危機から脱出させることが出来たならば、
それは日本政府の、国際社会、外交関係での
影響力を飛躍的に高めることが出来るだろう。

最近の外交関係においては、韓国にはなめられ、
国際社会での発言力は皆無、そして中国に至ってはやりたい放題。
軍事的プレザンスが日本近海、南シナ海において日に日に増す一方、
まったくもって打つ手立ての無い日本政府。
この中国からの圧力に対して、どう対抗していくのか?
もちろん軍事的圧力に対して取るべき行動は、
軍拡でも、対話でもなく、経済的圧力で封じ込めることだろう。

しかし、経済的にも劣勢に立たされているのが日本の現状。
一帯一路で急速に世界経済に侵食しているチャイナマネー。
諸外国との外交関係を抑えられ、
資源の購入や工業製品販売で経済関係も抑えられ、
インフラ投資も抑えられ、急速に力を付けていく中国。
対照的に日本は、資源は中国に押さえられ、かつての顧客を失って行く。
メイドインジャパンも号令だけで、
ジャパンマネーも投資の行き場を失なっていく。

欧州連合からの離脱で、寄らば大樹の陰、経済的なより所を失う英国。
まずは経済的な損得勘定を捨て、英国の心理的な負担を減らすことだろう。
ここは一つ、三顧の礼をもって英国をTPPに参加させ、
そして、NAFTA(USMCA)への参加をお膳立てしてみてはどうか?
そしてゆくゆくは、TPPとNAFTAで協力関係を締結し、
巨大な経済圏を作り、中国の軍事的圧力を封じ込めてみては。
今ここで英国を救い、強固な信頼関係を結べば、
英国を見方に付け、TPP・NAFTA連合の主導的な立場を取れる。
また、ここで外交力、影響力を高めておけば、
この超巨大地域経済圏の本部を日本に置くことも可能。
IMF、世界銀行、OECD、WTO、国連など
世界第三位の経済規模にも関わらず何一つ持たず、発言力もない日本。
そして失われた20年が30年になり、景気の波は右肩下がり、
少子高齢化、人口減少、このままジリ貧で終わるのか?



経済の重心は西へ移動している。
もし経済に重みがあるとしよう、経済の重心、
グラビティーセンターはいったいどこにあるのか?
かつて19世紀、いち早く産業革命を達成したヨーロッパにあったであろう。
その経済力は、圧倒的人口を誇る、中国、インドをも破り、
アフリカ、中東、東南アジアを植民地にし、全世界を支配した。

そして第一次、第二次大戦後、
戦火によってヨーロッパ、日本の産業は破壊し尽くされ、
世界経済の中心はNYに。アメリカはパクスアメリカーナの元、
圧倒的工業力で経済的影響力を大いに高めて行くことになる。
そして経済の重心は、ヨーロッパからアメリカへと西へ動き、
大西洋の中央、大西洋中央海嶺まで引っ張ってくることになる。

しかし20世紀の終わりに、経済復興を成し遂げ、
第二位の世界経済まで上り詰めた日本。
そして圧倒的人口のもと、鄧小平の改革開放で飛躍的に拡大する中国。
重心は遂に大西洋を渡ってNYに。
そして2000年、アメリカはインターネットバブルを謳歌することに。

世界経済の重心は西に動き続ける。
その後アメリカ国内ではリーマンショックの影響もあり、
デトロイトなどでは脱工業化が急速に進みラストベルトになる。
そしてアメリカ国内の経済の重心は、
大西洋からカリフォルニアのある太平洋方向へと、移動して行くことになる。
そうラストベルトからシリコンバレーへと。
アメリカ経済の重心は、グランドキャニオンがある
コロラド州あたりだと言われている。



翻って現在の世界経済。
今だに強大な経済規模を誇るアメリカ国内でも経済の重心が西へ移動し、
また世界2位3位6位の中国、日本、インド経済に引っ張られ、
世界経済の重心は遂にアメリカを横断し、太平洋側まで来てしまう。
そう、シリコンバレーやサンフランシスコのあるカリフォルニアまで。
そしてその流れは留まらず、まだ西へ移動しつづけている。

次に日が落ち、昇る時には、経済の重心はどこにあるだろう?
中国、日本、インド、インドネシア、バングラディッシュ、パキスタン
成長著しく、多くの人口を抱えるこれらの国々、及び東南アジア。
太平洋を渡らずとも、太平洋の西より、
日本とハワイの中間あたりにはすぐに到達するであろう。
そう、世界経済の重心はすぐそこまで来ているのである。

もし、世界経済の重心という地理的特性を活かし、
TPP・NAFTA連合の中心的役割を担うことができるのならば、
恐れるものは何もないだろう。



中国は14億人とも言われる人口を抱え、世界第二位の経済大国だが、
貧富の差が激しく、内需の発展は遅れ、内陸部は未開発。
つまり一カ国では、完結しない経済システムなのである。
海外から投資を呼び込み、工業製品を生産、そしてそれを世界に販売。
これが中国経済の実態である。
今、海外からの投資が無くなっても、生産は継続できるだろう。
しかし地域経済圏を構築され、見えない壁が立ちはだかり、
域内での貿易を優先されたら、中国の影響力に陰りが見えてくるだろう。
なぜなら国内需要はさほど大きくなく、
たくさん生産しても販売、消費しきれないのである。

先進国の生活は、安い労働力で製造された、
安価な工業製品を消費することで成り立っている。
つまり中国製だろうと、MADE IN TPPだろうと関係ないのである。
今ある中国の生産拠点をTPPの国に移し変え、
域内での生産、消費を優先されたら、中国には痛いだろう。
仕事と顧客をいっぺんに失うことになるのだから。。。



そして、世界の金融センターからのアクセスが遠ざかれば、
成長性に陰りが出てくるだろう。
今までは先進国からの投資で、技術と資金を呼び込んで成長して来たが、
この流れが止まれば、独自に発展せざる終えない。
安い人件費のもと、追いつくのは簡単だったが、
今後は中進国の罠と言われるように、高い人件費が発展を妨げる。
そこにTPP・NAFTA連合のグローバル金融との間に、
見えない壁が立ちはだかれば、発展、成長にとって
必要不可欠な投資や技術の導入が滞ることになる。
香港も上海もグローバル金融センターと言うにはまだ早く、
今の成長途上でグローバル金融から切り離されれば、
自国内でのみ資金をやり繰りしなければならない。

かたやTPP・NAFTA連合の資金調達は、さらに容易になるだろう。
東京から始まり、シンガポールが閉まるころには、ロンドン、
そして、グリニッジ時間の午後にはNYがオープン。
NYが引けて数時間後には、また東京で取引が開始されるのである。
ほぼ24時間滞ることなく資金がやり取りされ、流動性を生み、
商品、サービスを域内優先で交換していくことになる。

もしブレグジットの危機に喘ぐ英国に救いの手を差し出し、
TPPの加入、NAFTA加入へのお膳立てが出来れば、
いずれ英国はTPPとNAFTAの架け橋となってくれるだろう。
つまりアメリカを欠いたTPPに、アメリカを参加させる原動力に。
アメリカ抜きのTPPでは、アメリカはおろか、中国のGDPにも達しない。
しかし、今こそこの局面を変える時だろう。


4 件のコメント:

  1. いつも楽しく拝見したおります、たいへんなご見識と感じる記事でした。グローバルマクロ的なセンスの真骨頂ではないかと感じ入っております。

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  2. まいど。。おおきに。。褒めすぎやて。。。
    まあ中国も大切な取引相手なんやけどな。
    日本同様、工業製品の輸出型モデルで成長してきて、
    商売敵になるのが目に見えているわけで。。
    最近のインフラの輸出でも、受注を競っているし。
    アジアの4スモールドラゴンと言われた、
    台湾、韓国、シンガポール、香港も、
    全部この日本の経済発展モデルを踏襲したわけで。
    そして今後著しい成長するであろう、
    東南アジアもこれに追随するだろうし。。
    パイの奪い合いから距離を置くためには、
    若干の囲い込みも必要なんすよ。
    またこのモデルからの脱却も考える必要が。。
    まいどまいど、円高が来るたびに株価暴落してるし、
    今日もこれやったし。。

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  3. VやMAのコメントありがとうございます。
    大暴落は待てども来ない、かといって凍死家の凍死が解ける
    わけでもないというブログのコメントについて、
    SP500が1500ぐらい、リ-マンショック同様の下落は、大暴落
    にあらずでしょうか?大暴落がどの程度が、少し具体的に
    教えていただけますと嬉しいです。

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  4. 高値からマイナス40%くらいで、
    短期的なV字ボトムを形成する可能性は少ない、
    ということを伝えたかったんやで。
    つまりリーマンショックの時の様な。
    だいたいSP500が1500~1800くらいかな?
    まあ未来のことは、絶対に分かりませんぜ。
    あっしに唯一分かることは、
    過去の局面よりは不確実性が高まっている。
    これだけやで?

    ただすでに20%ほどは落ちてるんやから、
    ここからさらに下げても、たかが20%やで。
    あっしの相場感としては、じわりじわり蝕んで来そう。

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